ストーリー杉田ミツオ(風間俊介)は、プロボクサーだ。今日もロードワークで走っていると、兄弟の猫が捨てられているのが目に入る。だが、別に猫が好きな訳でも無いミツオは、気にせずにその場から走り去る。家に戻り、暫くすると・・・兄貴(つるの剛士)が、さっきの猫を拾って戻って来た。犬派のミツオは飼う事に反対するが、強引に飼う事を決めた兄貴は、黒い雄猫にクロ、白黒ブチの雌猫は小さいからチンと名付け、ミツオに世話を押し付ける。貧乏ボクサーのミツオは漫画家である兄貴の家に居候している身で・・・「嫌なら家賃を払え」と言われ、渋々世話を始めるのだった。
ミツオはB級ライセンスのボクサーだ。あと1勝すればA級に上がり、日本ランカーになり世界に挑戦する事も可能だ。だから、ボクシングに専念する為、バイトも辞めて兄貴の家に転がり込んでいる・・・という訳である。ボクシングの練習が終わり家に戻ると、猫の世話が待っている。猫達はミツオが呼んでも、来る気配すらない。そのくせ、ミツオが寝ようとすると布団の中に潜り込んで来たり、寝てるミツオの上を走り回ったりと、邪魔するのだった。その後も、床で小便をしたり、ミツオの大事なボクシンググローブをおもちゃにしたりと、やりたい放題だ・・・。ある日、ミツオがいつものようにロードワークに出ようとすると、大家さん(市川美和子)が「最近、猫の鳴き声がするらしいけど、知らない?」と声を掛けてくる。とぼけて誤魔化す、ミツオ。だが、玄関がキッチリ閉まっていなかったので、猫達が出てきていきなりバレてしまった。猫が大好きな大家さんは、怒るどころかミツオに世話の仕方を教えてくれるのだった。
猫達は、スクスクと成長する。毎日世話をしているミツオに、少しずつ懐いていく。だが、餌をあげていない大家さんにも懐いており、何だか面白くないミツオ。ある日、ミツオの試合があり・・・こっぴどく殴られたものの勝負には勝ち、遂にA級ライセンスを手にする!しかし、喜んだのも束の間。殴られた傷の為、網膜裂孔と診断されたミツオは・・・ボクシング生命を絶たれてしまう・・・。夢破れ、落ち込むミツオに小遣いを渡し、「美味い物でも食べて来い」という兄貴。減量を気にせず、好きな物を好きなだけ食べ、好きな事をして遊ぶミツオだったが、その程度の事で気が晴れる訳は無い・・・。家に戻ったミツオに、「もっと遊んで来い」と更に金を渡す兄貴。
兄貴の仕事を手伝うミツオに、「漫画家になれば?」と勧める兄貴。「頑張れよ!」と励ましてくれる兄貴に、本気で自分の事を心配してくれる・・・と感謝するミツオ。だが、突然兄貴が「彼女と結婚して、田舎に帰る」と言い出し、荷物をまとめだした。つまり、先日の「頑張れよ」は「この先、1人で頑張って生きていけよ」という意味だったのである。猫達を置いて、1人田舎に帰ってしまう兄貴。これからは毎月4万の家賃も自分で払わなければならない。貯金が20万程度しか無いミツオは、バイトを探し出す。猫達も、いつものマグロの猫缶は贅沢だ・・・とシラスの安い猫缶を買ってくるが、舌が肥えた猫達は見向きもしない。仕方なくいつもの猫缶を買って帰ったミツオだったが、猫達の姿が無い。心配して探し回るミツオ。見付からず、諦めかけた時・・・公園で女性に遊んで貰っている猫達に再会する。女性は「外飼いは不衛生だからお勧め出来ません。それとメスは避妊、オスは去勢の手術を」と言い残し、去って行くのだった。
クロは雄猫の癖に、気が弱く家に閉じ籠りっきりである。チンは雌猫だが、気が強く野良猫達と外を遊び回っている。ミツオはクロを鍛えようと躍起になるのだった。そうこうしているうちに、今度はチンに問題が発生する。帰りが遅くなったり、彼氏なのか、近所のボス猫・バロックが迎えに来たり。もしかして、妊娠していたらどうしよう・・・と不安になってチンを動物病院に連れて行く、ミツオ。獣医に勧められ、仕方なくチンを避妊手術するのだった。手術費の2万2千円は、兄貴に泣き付いて借りたのだ・・・。それから、チンは近所の猫に相手にされなくなり・・・殆ど家から出なくなってしまった。猛烈に罪悪感に襲われる、ミツオ。そして今度は、クロが外に出歩くようになり、度々喧嘩をして帰って来るのだった。ある日、クロが大怪我をして帰って来た。動物病院に連れて行くと、数日入院する事になった。家に戻って来ても、また外に行って喧嘩するクロ。いつも傷だらけだ・・・。
ミツオのバイトが決まった。幼稚園の給食係だ。そこには以前公園で出会った女性・・・管理栄養士のウメさんこと梅沢(松岡茉優)がいた。仕事は朝早い時間からで辛かったが、猫の世話と仕事を両立させるミツオ。暫くして、クロは猫達のボスになってしまう。ある日、クロが寝ているミツオの枕元にトカゲの死体を置いて行った。今まで世話して貰ったお礼をくれたんだと喜ぶミツオだったが、ウメさんは「自分より格下の相手に狩りの仕方を教えようとしている」と説を披露。それに怒ったミツオは一発奮起し、漫画家を目指す決心をするのだった。バイトと漫画の両立は難しく、フラフラになりながらもミツオは作業に没頭する。そして遂に原稿が完成した!・・・と思ったところ、突然手に持っていた原稿が真っ二つになる。クロが破ったのだ!クロを怒ろうとしたミツオだったが、どうもクロの様子がおかしい。慌てて病院に走ったミツオ。だが検査の結果・・・クロは猫エイズに侵されていた。感染した猫と喧嘩した事が原因だと、医者は言う。そして、もうクロを治す術は、存在しないのだった・・・。涙を流す、ミツオ・・・。
感想〇杉作が原作の、実話を元にした漫画を映画化した作品ですね。
〇杉田ミツオはプロボクサーになるべく、頑張っている青年。あと一勝すれば世界が開ける所まで漕ぎ着け、ボクシングに専念しようとバイトを辞めて漫画家の兄貴のアパートに居候させて貰い暮らしている。そんなある日、ロードワークの帰りに2匹の捨て猫を発見したミツオ。犬派のミツオは捨て猫をその場に残し家に戻るが、兄貴がその猫達を拾って帰ってくる。雄の黒猫にクロ、雌の白黒模様の猫にチンと兄貴が名前を付け・・・ミツオは居候している事を盾に取られて世話を押し付けられる。気ままな仔猫達に振り回されるミツオ。そして、ようやく試合に勝ったものの、目を傷めてボクシングの世界から引退を余儀無くされたミツオに、追い討ちをかけるように漫画家を廃業し実家に戻ってしまう兄。残されたミツオと2匹の猫達だけの生活が始まったのだった・・・といった内容ですね。
〇んー。私は猫派なんですけど。6年前、ラーメンを食べに行った帰りに拾った猫を今でも飼っています。怯えて鳴いていた仔猫を、コンビニで買ったカラアゲで釣って捕まえて持ち帰ったので、名前をカラアゲにしようとしたら家族から猛反対されたんですよねぇ。因みに、今はチワワも飼っているので、犬派でもあります(笑)。
〇そんな私から見たら・・・ミツオ、あまりにも猫を飼うという事に対し無知過ぎる・・・というか、投げやり過ぎ。外に猫が遊びに出ても無関心(それ以前に、玄関開けっ放しで外出するって、防犯的にどーなのよ?)だったり、避妊手術をなかなかしなかったり。家で囲われて暮らす猫が本当に幸せなのか・・・といった問題は残りますが、飼主としての責務は果たすべきじゃないのか・・・ってのが一番気になったんですよねぇ。猫達の演技は良かったし、可愛かったんですけど・・・そっちの方が気になっちゃって。
〇「二階の住人が、最近猫の鳴き声がすると言っている」と言ってきた大家さん・・・ミツオの家から出て来た猫を見付けても、怒るどころか餌を持って来る始末。二階の住人、苦情言ってたんじゃ・・・。土地柄なのかな?おおらかだなぁ(笑)。
〇そして・・・無職になっても、高級な猫缶を与え続けるミツオ。まず、そこから節約して・・・とっとと働けよ!って、気になって、気になって(笑)。
【ラストは…ここをクリック! (ネタバレ注意) 】
ラストは・・・ボクシング漫画を応募したが、結果は落選であった。ミツオは諦めず、新しく描き直して再度応募する。日に日に疲れは蓄積し、フラフラになって家に戻ると、今日もクロが床を汚している。思わず、クロに怒るミツオ。だが、そんなミツオの手を、クロはペロペロと舐めてくれる。クロに泣いて謝るミツオ。クロが猫エイズになったのも、元はと言えば「男ならボスになれ!」とばかりに喧嘩をけしかけたからだと思ったのだ。そんなミツオの様子を見て、外へ出掛けるクロ。久々に家から出たクロは、今までいつも散歩した道を懐かしむよう歩く。夕方になり戻ってくると、横たわったまま苦しみ続け・・・そして朝方、眠るように息を引き取ったのだった・・・。
クロの死を、ウメさんに報告したミツオ。ウメさんは涙を流してくれた。「クロちゃんと過ごした時間、楽しかったでしょ?それで良いんです。私も飼っていた猫が死んだ時、そう思う事にしたんです」とミツオを慰めてくれるウメさんだった。
ミツオが夜中にふと目を覚ますと、テレビの上にいつものようにクロが座っている。驚き飛び起きたが、それはクロではなくてチンだった。すぐその場から離れてしまう、気紛れなチン。もう一度、テレビの上に座って貰おうとチンを呼ぶミツオだったが、いくら呼んでもチンは来ない。猫は、気紛れな生き物なのだ。その時、ふと漫画のアイデアが閃くミツオ。今迄描いてきたボクシング漫画では無く、クロやチンの事を描こうと思ったのだ。拾ってきてから、一緒に過ごした思い出を、漫画にしようと考えたのである。完成した漫画のタイトルは、『猫なんかよんでもこない。』に決まった。
漫画を描いていて、クロやチンは自分の事を必要としてくれる、本当に大切な存在だったと気付いたミツオ。そんな話を、ずっとバイトを休んでいるミツオを心配して来てくれたウメさんに話すのだった。ウメさんは黙ってその話を聞き、ミツオの事を褒める。そして、持って来たお弁当を手渡すのだった。家に帰り、喜んでお弁当を食べるミツオ。
夕方、眠っているミツオの所に、チンがトカゲの死体を持って来る。そして、ミツオに寄り添うように眠るのだった。その時、電話が鳴る。ミツオは目覚めない。留守番電話に切り替わる、電話。その相手は、漫画の編集部。ミツオが送った原稿について、話があるらしい。きっと、採用が決まったのだ。そんな事は露知らず、ミツオは幸せそうな顔で、チンと眠り続けるのだった。
〇まぁ、ハッピーエンド・・・なのかな?クロはきっと、天国でミツオの事を見守ってくれてるよ!
【ネタバレを隠す】